第50回(2019年)
JXTG童話賞
【中学生の部 優秀賞】

僕の名前作者:馬場涼子 / 絵:にしざかひろみ

ある日、朝の学活で先生の後に続いて教室に入ってきたのは、僕に似て、背が小さく気が弱そうな女の子だった。僕は興味がなかったので視線を窓の外へ移し、空を見ていた。空はどんよりと曇っていて、今にも雨が降り出しそうだった。

昼休み、気が付くと転校生は僕の机の前に立っていた。僕が驚いて読んでいた本から目を上げると、転校生は質問をしてきた。

「君、名前なんて読むの?」

胸がちくりと痛んだ。しかし、笑って答える。

「えみって読む。咲くって書いてえみ。」

「男の子には珍しい名前だね。」

「よく言われる。」

「かわいくていいね。」

「そうかな。」

僕は今にも泣き出しそうだった。『こんなことで泣きそうになっているから、みんなに泣き虫って言われるんだぞ』と自分に言い聞かせるが、鼻の奥がつんとしている。その時、昼休みの終わりのチャイムが鳴った。転校生が席に戻ると、僕は赤くなった鼻を隠すように、机に突っ伏した。

僕がこの名前を嫌っているのには、理由がある。それは、男なのに女の子のようなかわいらしい名前だから。僕に名前を付けたお母さんは僕が幼い頃に亡くなっている。更にお父さんは僕の名前の由来を知らない。僕は時々、もっと男の子らしくてかっこいい名前だったら、僕は泣き虫じゃなくて、引っ込み思案でもなくて、クラスの人気者になれていたのかなと思ってしまう。そんなはずはない。そう思っても、こんな名前が悪いんだと、名前のせいにしてしまう。僕はこんな弱い自分がなにより一番嫌いだった。

  • 1
  • 2
  • 3

次のページ次のページ

過去の受賞作品のご紹介

今までの受賞作品をカテゴリ毎に分けて
ご紹介しております。

  • 楽しい&
    元気になる話

    楽しいお話、
    元気になれる
    お話をまとめました。

    一覧はこちら一覧はこちら

  • 心が
    あたたまる話

    こころがほっこり
    あたたまるような
    お話をまとめました。

    一覧はこちら一覧はこちら

  • 心にしみる話

    心にじんわりしみる
    ような、
    胸を打つ
    お話をまとめました。

    一覧はこちら一覧はこちら

  • ふしぎな話

    ちょっと不思議で
    ファンタジックな
    お話をまとめました。

    一覧はこちら一覧はこちら

  • 動物が
    出てくる話

    いろいろな動物が
    登場するお話を
    まとめました。

    一覧はこちら一覧はこちら

  • 季節の話

    春夏秋冬、
    四季を感じる
    お話をまとめました。

    一覧はこちら一覧はこちら

童話の花束 PDF バックナンバーはこちら童話の花束 PDF バックナンバーはこちら