第46回(2015年)
JX-ENEOS童話賞
【中学生の部 優秀賞】

色鉛筆作者:中原伊織

色鉛筆

ぼくが君に出会ったのはあの夏祭りでのことだった。
焼きそば、綿あめ、金魚すくい、様々な屋台が立ち並び、人々の話し声、屋台の売り子の声が響き、夜空に吸い込まれていく。ぼくがふと目を下に向けると足元に一本の鉛筆が転がっていた。猫の柄の入ったかわいらしいやつだ。前を見ると浴衣を着た女の子が歩いている。きっとその子のものだろうと考え、ぼくは声をかけた。
「あの、鉛筆、落としませんでしたか?」
しかし彼女からの返事はない。前を向いたまま歩き続けている。ぼくは少しむっとした。親切で声をかけたのにそれを無視されればだれだって気持ちのいいものではない。
「これ、きみのじゃないの?」
少し強めに肩を叩いて呼び止める。
すると彼女は振り返り、ぺこりと頭を下げて鉛筆を受け取った。そして手に持っていたスケッチブックに何か書き込み、ぼくに見せた。
『ごめんなさい、わたしは耳が聞こえなくて、だからわからなかったの。』
ぼくは驚いた。しかしそれと同時に反省もした。何も知らず肩を強く叩いてしまったからだ。そのことを謝りたくて彼女からスケッチブックと鉛筆を借り、書き込んだ。

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