第43回(2012年)
JX童話賞
【一般の部 優秀賞】

今年の花火作者:戸泉妃美子

今年の花火

 結衣の町の花火大会が、今年は取りやめになった。東のほうでおこった大きな災害で、たくさんの人が命をおとし、生活の場をうしなったためだ。
 にぎやかな行事をひかえるのは、とても自然なことだった。だから、連くんとの約束まで「中止」になってしまったことを残念がる気もちは、結衣の胸のうちに、そっとしまいこまれた。
 連くんとは小学校が別だったので、中学生になって初めて出会った。席が近かったおかげで、さいしょから友だちのように話せた。
 去年、九月の教室で、終わったばかりの夏休みの話をしていたとき、となりにいた連くんがふりむいて言った。 「来年の花火、いっしょに行こうか。」
 びっくりして、すぐ返事ができないでいるうちに、まわりにいたみんなが口ぐちに答えだした。
「いいね、そうしよう。」
「行こう、行こう。」
 次の花火なんて、まだずっと先のこと。それでも、連くんがいちばんに結衣をさそってくれたのがうれしくて、心が浮きたった。二年生になってクラス替えがあり、別々のクラスになってしまったときも、花火の約束があるからだいじょうぶだと思っていた。
 そんなある日、花火大会の中止が発表されたのだ。  毎年、七月さいごの木曜が、花火の日と決まっていた。その日がやってきて、夕暮れどきになると、いてもたってもいられなくなり、結衣はおもてに出た。足はひとりでに、いつも花火会場になる河川敷にむかっていた。ふだんと変わらない商店街、ショーウィンドウに映ったTシャツすがたの自分を見て、とつぜんかなしくなる。

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