第41回(2010年)
JX童話賞
【一般の部 優秀賞】

山姥作者:高橋冨美枝

山姥

 微かな泣き声が聞こえた気がして、山姥は目を開けた。あたりはもう暮れかかっている。山姥は起きあがると、声のするほうへ歩きだした。
 声の主は大杉の根元にうずくまった、やせた子どもだった。その姿を見て、山姥の腹が鳴った。大して食いではないかもしれないが、と子どもの前に立ちふさがる。
 足音に子どもが顔を上げた。その顔を見たとき、山姥は動けなくなった。  実のところ、山姥は子どもなど食ったことはなかった。ただ普段は山の動物、時には里に下りて子牛を食ったこともあったから、きっと人間の子も旨いだろうと思っただけだった。だが、自分を見あげた子どもの目は、それまで食ってきた動物とは何かが違った。そしてその「何か」が山姥の心にとまどいを生んだ。
 子どももまた、山姥を知らなかった。目の前の老婆は、薄汚れてはいるが普通の年寄りに見えた。
 子どもは涙をぬぐうと立ちあがった。
「婆様はこの辺に住んでおるのか?」
「……そうだ。」
「道に迷ってしまった。ふもとに行く道を教えてくれ。」

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