童話っていいね!~おすすめ童話のご紹介~

たろうのひっこし

たろうのひっこし

村山桂子:作
堀内誠一:絵
出版社:株式会社福音館書店 ISBN:978-4-8340-0137-2

1985年2月発行 800円+税

作者の村山桂子さんは、1930年静岡県生まれ。お茶の水女子大学幼稚園教員養成課程を修了しました。1955年に第二回全国児童文化教育研究大会童話コンクールに入選し、『たろうのばけつ』『たろうのおでかけ』『たろうのともだち』『おかえし』(以上福音館書店)、『はねーるのいたずら』(フレーベル館)、『もりのおいしゃさん』『コンタのクリスマス』(以上あかね書房)など、たくさんの作品を発表しています。
絵の堀内誠一さんは、1932年東京生まれ。カメラ雑誌やファッション誌など、数多くの編集美術を手がけたグラフィックデザイナーです。イラストレーターとしても、絵本や児童書で活躍しました。1987年に亡くなってからも、『くろうまブランキー』『ぐるんぱのようちえん』『こすずめのぼうけん』(以上福音館書店)、『人形の家』『空にうかんだお城』(以上岩波書店)など、さまざまな作品が子どもたちに読み継がれています。

ココがいいね!

春は、入園や入学、進級など、子どもたちの成長を改めて実感する季節ですが、もしもお子さんが「自分の部屋が欲しい」と言い出したら、あなたはどう答えますか?まだ早いかなと思ったり、部屋に余裕がなかったり、なかなか悩ましい問題ですよね。このお話の中でも、主人公の男の子が自分の部屋を欲しがります。それに対して、男の子のお母さんは、要望をそのまま受け入れるわけでも、あっさり却下するわけでもなく、子どもの気持ちをしっかり理解しながら、とてもユニークな答えを男の子に差し出しています。ストーリーの楽しさはもちろん、子育てのヒントをくれるお話としても人気です。

この本の読みどころ

「ぼく じぶんの おへやが ほしいな」と言うたろうに、お母さんがくれたのは、1枚の古い絨毯でした。これを広げたところがたろうの部屋だと言うのです。たろうは、まず、廊下の階段の下に自分のお部屋を作りました。そこに猫のみーやを招くと、窓があった方がもっといいと言うので、絨毯をくるくる巻いて、居間の窓の下に引っ越しました。すると今度は、外にいる犬のちろーが、たろうのお部屋に入れないことを残念がるので、犬小屋の前に引っ越しました。そうやって、絨毯をくるくる巻いては引っ越しを繰り返し、たろうは最後に、春いっぱいのお部屋を作りました。それは…。
ダンボールで基地を作ったり、押し入れの中でおままごとをしたり、子どもたちは自分の空間を作るのが大好きです。たろうも同様で、自分の部屋が欲しいと言いましたが、それは自分の空間のことであって、立派な部屋でなくていいのです。そのことをちゃんと見抜いて、1枚の古い絨毯を渡したお母さんも、絨毯と豊かな発想で素敵なお部屋を次々と作り出すたろうも、どちらもお見事です。子どもたちの普遍的な心理をとらえた作品だけに、初版から30年近く経ってもなお、その魅力が色褪せることはありません。