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「アンジュール - ある犬の物語 -」

「アンジュール - ある犬の物語 -」

ガブリエル・バンサン
BL出版 1986.5.1 第1刷
1,300円+税
ISBN4-89238-957-9
この本は「日本図書館協会選定」「全国学校図書館協議会選定」「産経児童出版文化賞美術賞受賞」などになっています。

この本は、ベルギーのブリュッセル出身のガブリエル・バンサンによって書かれました。美術学校で長年デッサンに専念しただけあり、鉛筆デッサンのみで巧みに犬の視点を表現しています。このほか、木炭デッサンの絵本として『たまご』、インクによるデッサン絵本として『セレスティーヌ』など(いずれもボローニャ国際児童図書展グラフィック賞)があり、その線描の確かさが最大の持ち味です。

ココがいいね!

この作者の作品は、卓越したデッサンのみで言葉を使わずに表現する絵本が多く、素直にも皮肉にも読めるところから、大人になってからでも何度も読める本として『たまご』とともにたびたび話題に取り上げられます。

この本の読みどころ

『たまご』は、巨大な卵が何なのか知らずに興味本位で群れ集まり、結局壊してしまう人間の愚かさを鳥があざ笑っているかのようなシーンで終わっていて、静けさの中に恐怖心を喚起するような作品ですが、この本は愚かな人間に負けずに、けなげに生き抜こうとする犬の姿が描かれています。絵本を見進めるうちに、鉛筆のたった一つの点が犬であり、さらに深い悲しみを持っているように見えてくるのが不思議です。最後に、同じような状況で同じ悲しみを持つ子供に出会い、お互いに心を通わせあう場面で終わっているので少し救われた気分になります。
この絵本は単に犬のけなげさに勇気づけられるだけではなく、大人になると忘れがちな大切な何かが描かれています。この絵本の深さや良さがわかっても、現実には犬(弱い立場のもの)を見捨てる側になってしまう大人にはなりたくないものです。