あれほど、暑かった夏の風が、ここちよい秋の空気をはこんでくるようになりました。
「そろそろ、仕事の支度をしないとね。」
 ユキエの仕事は雪女です。白く凍った息をふきかけ、人間をあっというまに、凍らせてしまうのです。仕事用のきものに着替え、山にむかって、歩きだしました。
「まだ、暑いわね。」
 ふうふうと、息をきらし、ユキエは、山をのぼりますが、なぜか、足は、思うように先にすすめません。
休もうと、川の近くの岩に腰掛けたときです。水にうつっていたのは、まるまるとした自分の顔でした。太った雪女なんて、みたことがありません。
「おかあさんにわかったら、たいへん。」
 ユキエのおかあさんは、雪女協会の会長で、ユキエは、その娘です。そのおかあさんに、今の姿をみせることはできません。

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